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2024.03.07
不動産×相続の基礎知識⑤~遺言の種類と特徴~

こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続の基礎知識を分かりやすく解説するこのシリーズ。今回は遺言の種類と特徴について取り上げてみます。


民法によると、一般的な遺言(普通方式遺言)には大きく分けて① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言の3種類があります。

これらの効力は同じですが、それぞれ法律上、作成方法が定められており、またメリット・デメリットにも違いがあります。

図表 普通方式遺言の種類と特長

種類 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成の方法 本人が遺言を書き、氏名・日付を自書し、押印する 本人と証人2名以上が公証役場へ赴き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述する 本人が遺言を書き署名・押印した後、封筒に入れ封印して公証役場で証明してもらう
証人等 不要 証人2名以上 公証人1名・証人2名以上
家庭裁判所の検認 原則として必要 不要 必要
遺言書の開封 封印されている場合、家庭裁判所において相続人等の立会いのもと開封する 開封手続きは不要 必ず家庭裁判所において相続人等の立会いのもと開封する

「自筆証書遺言」は、遺言者が紙に自ら遺言の内容の全文を手書きし、さらに日付および氏名を書いて押印することにより作成します。

基本的に全て本人が自筆する必要がありますが、民法改正により2019年からは、パソコン等で作成した財産目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書等を財産目録として添付したりすることが認められるようになりました。

このように自筆証書遺言は作成が簡単で費用もかかりません。遺言内容を相続人や第三者に対して秘密にすることもできます。毎年、お正月に遺言書を書き直す人もいるそうです。

一方で、本人が亡くなった後、遺言書が発見されないままになったり、極端なケースとしては相続人の誰かが発見して開封し、自分に不利な内容であることから破棄したり、隠してしまうということも考えられます。

また、家庭裁判所において「検認」を受ける必要があります。検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料を科されることもあります。

ただし、発見されない等のおそれや検認の手続きについては2020年から一部変わっています。一定の様式に従って作成した封をしていない自筆証書遺言であれば、自筆証書遺言保管制度を利用して法務局で保管してもらうことができ、検認も不要になっています。

これに対し「公正証書遺言」は、遺言者本人が公証人と証人2名の前で遺言の内容を口頭で告げ、公証人がそれを確認して文章にまとめ、公正証書として作成します。

「自筆証書遺言」に比べると、専門家である公証人が作成するので方式の不備で無効になるおそれがありません。また、公証役場で遺言書が保管されるので紛失や発見されないといった心配も不要です。家庭裁判所における検認手続きもいりません。

さらに、病気になったり体力が弱ったりして文字を書くことが困難となった場合でも、公証人に口頭で告げることができれば遺言書を作成することができます。

一方で、作成にあたっては遺産の額に応じて一定の費用がかかりますし、証人から遺言の内容が漏れるおそれがないとはいえません。

「秘密証書遺言」は両者の中間的な方式です。本人が遺言を書き署名・捺印した後、封筒に入れて封印し、証人2名以上と公証役場に持って行って自分の遺言書であることを証明してもらいます。ただし、公証人が内容を確認するわけではないので形式の不備などがあっても分かりません。また、遺言書は自分で保管しなければなりません。家庭裁判所での検認も必要です。こうしたことから「秘密証書遺言」は現在ではほとんど利用されていません。

それでは、これらの遺言書が実際にどれくらい利用されているのでしょうか。

「自筆証書遺言」の検認の件数については、司法統計によると2012年には1万4996件であったものが2021年には1万9576件と約30.5%増加しています。

また、公正証書遺言については日本公証人連合会が作成件数の統計を公表しており、2012年には8万8156件であったものが2022年には11万1977件と約27%増加しています。

遺言書にはこのようにいくつかの方式がありますが、その効力に違いはありません。また、取り消しや変更はいつでもでき、日付がもっとも新しい遺言書(法律が定めた様式等の条件を満たすもの)のみが有効とされます。

それぞれの違いと特徴を踏まえ、上手に遺言書を利用したいものです。

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