アイコンCONTACT

column

2024.03.25
不動産×相続の基礎知識⑥~相続税の計算方法と税額の目安~

こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続の基礎知識を分かりやすく解説するこのシリーズ。今回は相続税の計算方法についてです。


相続につきものなのが相続税です。実際には税理士に頼んで手続きを行うのが一般的ですが、相続税の計算方法の大まかな流れくらいは知っておきたいものです。具体的には、4つのステップで行います。

第1のステップは、「正味の遺産額」を把握することです。

遺産には通常、プラスの財産として現金や預貯金、株式、債券、自宅の土地建物のほか、ゴルフ会員権、自家用車などがあります。一方、マイナスの財産として、住宅ローンや税金の未払金などがあります。これらを合算して正味の遺産額を把握するのです。

ここでポイントになるのが、土地建物などの不動産がいくらなのかということです。不動産には同じものはふたつとしてなく、市場価格もよく分かりません。そこで相続税の計算においては一定の評価方法が定められています(これについては回を改めて取り上げます)。

また、遺産には含まれませんが、相続税がかかるものとして「みなし相続財産」と呼ばれるものがあります。具体的には死亡保険金や死亡退職金、一定の贈与財産などです。これらはいずれも亡くなった人以外の受取人が決まっており、相続の対象とはなりません。しかし、税負担の公平性の観点から相続税の計算に含めることになっているのです。

第2のステップは、相続税の課税対象となる「遺産額(課税遺産総額)」を計算することです。

相続税には3000万円に法定相続人一人あたり600万円を加えた「基礎控除額」があり、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた部分にのみ相続税がかかります。

例えば法定相続人が3人なら【3000万円+600万円×3人=4800万円】となり、課税遺産総額が4800万円以下であれば、相続税の申告・納税の必要はありません。

この基礎控除額があるため、実際に相続が発生したうち相続税を納めなければならないケースは10%程度に過ぎません(とはいえ割合は年々高まる傾向にあります)。

なお、民法では相続放棄した人は最初から相続人ではないことになりますが、税法では相続放棄をした人がいても基礎控除額の計算における法定相続人の人数に変わりはありません。

また、民法では養子はすべて相続人となりますが、税法では被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか基礎控除額を計算する際の相続人として認められません。ただし、養子といっても特別養子や配偶者の実子で被相続人の養子になった場合はこうした制限はなく、基礎控除額を計算する際の相続人に含まれます。

「相続人」とひと口にいっても、民法と税法では微妙に違う点には注意が必要です。

第3のステップは、「相続税の総額」を計算することです。

ここが間違えやすいところで、実際に遺産をどのように分けるかは遺言書の内容や相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)で決まります。そのため自分がもらった遺産額をもとに相続税の額を計算してしまいがちですが、そうではありません。

遺産をどのように分けてもトータルの相続税額が同じになるよう、税法上では「法定相続分で分けたもの」として相続人それぞれの相続税額を計算し、それを合計して相続税の総額を先に確定するのです。

図表 相続税の速算標

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

第4のステップは、相続税の総額を各相続人が実際に相続した遺産の割合に応じて分け、「相続人ごとの納税額」を計算することです。

ここでポイントになるのは、相続人によってはさまざまな税額軽減や控除、加算措置が設けられていることです。

代表的なのが「配偶者の税額控除」です。被相続人の配偶者は、受け取る遺産が1億6000万円または法定相続分にあたる額まで相続税が控除され、実質的に相続税がかかりません。

逆に、亡くなった人(被相続人)の兄弟姉妹や甥、姪が相続人となった場合、あるいは被相続人の孫が被相続人と養子縁組して相続人となった場合には、相続税額が2割加算されます。

以上のような相続税の計算方法を踏まえて、相続人に応じた相続税額の目安をまとめたのが次の表です。

図表 相続税額(総額)の目安(配偶者がいる場合)

正味の遺産総額 相続人
配偶者と子1人 配偶者と子2人 配偶者と子3人
4,000万円 0 0 0
5,000万円 40万円 10万円 0
6,000万円 90万円 60万円 30万円
7,000万円 160万円 113万円 80万円
8,000万円 235万円 175万円 138万円
9,000万円 310万円 240万円 200万円
1億円 385万円 315万円 263万円
2億円 1,670万円 1,350万円 1,218万円
3億円 3,460万円 2,860万円 2,540万円
5億円 7,605万円 6,555万円 5,963万円
10億円 1億9,750万円 1億7,810万円 1億6,635万円

pagetop