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2024.01.31
不動産×相続の知って得するニュース⑥~配偶者居住権の概要と利用法~

配偶者居住権の概要と利用法

こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。

不動産と相続に関する知って得するニュース。今回は2020年からスタートした「配偶者居住権」の概要と利用法について取り上げてみます。


民法の改正によって2020年(令和2 年)4 月から設けられたのが「配偶者居住権」です(民法1028条~1036条)。

「配偶者居住権」とは、自分の配偶者が亡くなり後に残された配偶者が、それまで住んでいた建物に自分自身が亡くなるまで、無償で住み続けたり利用したりすることができる権利のことです。また、配偶者居住権は建物についての権利ですが、その敷地についても利用権が発生します。

図表 「配偶者居住権」の概要

権利の主体被相続人(亡くなった人)の配偶者
※内縁関係にある者は認められない
主張できる権利遺産である自宅建物を終身、無償で居住したり収益したりすること
※相続放棄していても認められる
権利発生の条件下記の両方が必要
①配偶者が遺産である自宅建物に相続開始の時に無償で居住していたこと
 ※被相続人の承諾や居住の有無は関係ない
②遺産分割または遺贈により配偶者が居住権を取得すること
権利主張の相手自宅建物の所有者
※建物所有者には配偶者居住権の登記設定義務がある
権利主張できる期間終身(配偶者が亡くなるまで)
※予め期間を定めることもできるが更新はない

なぜこのような権利が創設されたかといえば、夫や妻が亡くなって残された配偶者のその後の生活を保護しようという意図からです。

例えば、夫が亡くなって、その遺産が自宅の土地・建物(相続税評価額3000万円)と預貯金(3000万円)だったとします。遺産の総額は6000万円です。

相続人が妻(配偶者)と子(一人)であれば、法定相続分は1:1です。この場合、妻が自宅の土地と建物を相続すると、預貯金は基本的にすべて子が相続することになります。妻としては生活の拠点として自宅は所有できますが、生活資金をどうするのかという問題が残ります。

この点、妻が自宅の配偶者居住権を相続することにすれば、その相続税評価額は土地・建物そのものよりかなり低くなり、例えば1000万円とすればあと2000万円の預貯金を遺産分割で相続できます。あるいは、亡くなった夫(被相続人)が遺言書でそのように指定しておくこともできます。

このように「配偶者居住権」は基本的に、高齢の配偶者(特に妻)の生活を保護するためのものですが、他にも次のようなケースでの利用が考えられます。

ひとつは、子のいない夫婦の場合です。どちらかが先に亡くなれば、残された配偶者と亡くなったほうの両親や兄弟姉妹が相続人になりますが、遺言で配偶者に全財産を相続させることも可能です(ただし、自分の両親には遺留分といって一定の遺産を請求できる権利は残ります)。

問題はその先です。将来、残された配偶者が亡くなったとき、その配偶者の家族構成にもよりますが、配偶者の兄弟姉妹やその子(姪や甥)などが相続人となる可能性があります。

先に亡くなるほう(例えば夫)が、残された配偶者の判断に任せるというのであればそれそれでよいでしょう。しかし、遺された配偶者が生きている間は自宅に配偶者が暮らすのはよいとして、配偶者が亡くなった後は、自分の血族に所有権を渡したいと考える人もいるのではないでしょうか。

その場合、残される配偶者には自宅の配偶者居住権と他の財産を遺言で渡し、配偶者居住権のついた自宅の所有権は自分の兄弟姉妹や甥、姪などに相続させるという方法も考えられます。

同じことは子連れで再婚した夫婦についても当てはまります。

先に亡くなるほう(例えば夫)の配偶者(妻)が自宅の所有権を相続した場合、配偶者(妻)が将来、亡くなるとその子に自宅の土地・建物の所有権は相続されます。先に亡くなった配偶者(夫)に子がいても、残された配偶者(妻)と養子縁組していなければ、配偶者(妻)の相続人になるわけではありません。

そこで、残される配偶者には自宅の配偶者居住権と他の財産を遺言で渡し、配偶者居住権のついた自宅の所有権は自分の子に相続させるという方法も考えられます。

さらに、配偶者居住権を利用して将来の相続税を軽減することも考えられます。

まず、配偶者の一方が先に亡くなった際のいわゆる「一次相続」においては、配偶者居住権を利用しても軽減効果は特にありません。

しかし、遺された配偶者が亡くなった際の「二次相続」においては、その配偶者が持っていた配偶者居住権(および敷地利用権)はそのまま消滅し、子などの相続人に引き継がれるわけではありません。遺産の額がその分、減ることになます。その結果、一次相続と二次相続トータルで考えれば、配偶者居住権を使わない場合に比べて、相続税が減ることになるのです。

実際には「配偶者居住権」を使うケースはまだ少ないようですが、様々なメリットがある制度であり、その内容を理解して上手に活用してみてはどうでしょうか。

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