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2024.07.01
不動産×相続の基礎知識⑩~相続税の税負担を左右する「配偶者控除」~

こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続の基礎知識を分かりやすく解説するこのシリーズ。今回は相続税において税額を大きく左右する「配偶者控除」についてです。


法定相続分か1億6000万円以下なら非課税に

本シリーズの第6回で、相続税の計算における4つのステップについて取り上げました。そのうち第3のステップで相続税の総額を計算し、第4のステップでは相続税の総額を各相続人が実際に相続した遺産額の割合に応じて分け「相続人ごとの納税額」を計算します。

この第4のステップで重要なポイントになるのが「配偶者の税額控除」(配偶者控除)です。

なぜなら、亡くなった人(被相続人)の配偶者は、受け取る遺産が「1億6000万円」か「法定相続分」にあたる額までは相続税が控除され、実質的に相続税がかかりません。

例えば、遺産の総額(評価額)が4億円で、相続人が配偶者と子であれば、配偶者の法定相続分は2分の1なので、2億円を配偶者が相続しても相続税はゼロで済みます。このように節税効果が非常に大きい制度なのです。

ただ、「配偶者の税額控除」にはいくつか要件や注意点があります。

第一に、この特例が適用されるのは、法律上の婚姻関係にある配偶者に限られます。事実婚や内縁関係と呼ばれるような関係でも近年、一定の権利が保証されるケースが増えていますが、相続税では認められません。

第二に、この特例の適用を受けるには、相続税の申告が必要です。「配偶者の税額控除」の適用を受ければ相続税を支払う必要がなくても、申告をしなければなりません。「相続税がかからないのだから申告する必要もないだろう」と勘違いしていると、せっかくの特例が適用されなくなるので注意が必要です。

なお、相続税の申告・納税の期限は、相続が発生したことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内です。

第三に、相続税の納税・申告を行うまでに相続人間で遺産をどう分割するかが決まっている必要があります。具体的には、有効な遺言があるか、または相続人間で遺産分割協議がまとまっていなければなりません。

申告期限内に遺産分割協議がまとまらない場合は

もし、遺言がなく、相続人どうしで話し合いがもつれ、相続税の申告・納税期限までに遺産分割協議がまとまりそうもない場合はどうしたらいいのでしょうか。

その場合は、相続税の申告期限内に法定相続分で分割したと仮定した「未分割申告」を行います。

未分割申告とは、実際には遺産分割をまだしていないけれども、法定相続分で遺産を分割したものと仮定して相続税額を計算して申告・納付することです。

同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。そして、申告期限から3年以内に遺産分割協議をまとめ、遺産分割協議がまとまった日から4ヶ月以内に「修正申告」や「更正の請求」を行います。

なお、未分割申告の時点では相続税の配偶者控除は適用されないので、いったんは相続税を納めます。その後、遺産分割協議がまとまって「修正申告」や「更生の請求」を行えば納め過ぎていた分が返還され、無申告加算税や延滞税も課せられません。

さらに、遺産分割を巡って訴訟が続いているなど申告期限後3年以内に遺産分割が終わらないやむを得ない事由がある場合には、申告期限後3年を過ぎた日の翌日から2ヶ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を管轄する税務署に提出し、承認を得られれば特例の適用を再度延長することができます。

そして、やむを得ない事由が解消すれば、その翌日から4ヶ月以内に遺産分割を行い、遺産分割ができた日の翌日から4ヶ月以内に「修正申告」や「更正の請求」を行います。

以上のような事情がなく、申告期限後3年を経過してしまった場合には、特例の適用は一切できなくなります。

その他にも、意図的に遺産の一部を隠していたのが税務調査によって発見され修正申告を行うことになった場合、修正申告において新たに申告する遺産については配偶者控除の適用を受けることができません。

二次相続での税負担にも注意

配偶者控除を巡っては「二次相続」まで見すえておくことも重要なポイントです。

配偶者の一方(例えば夫)が亡くなった際の相続を「一次相続」といいます。その後、もう一方の配偶者(妻)が亡くなった際の相続を「二次相続」といいます。「二次相続」は通常、子への相続となります。

配偶者控除が適用されるのは一次相続の時だけ、かつ配偶者だけです。子は一次相続と二次相続の2回、続けて相続することが多く、遺産の額によっては相続税が2回課税されます。

ただし、10年以内に連続して一次相続、二次相続が発生した場合に、相続開始前10年間のうちに被相続人(この場合は一次相続で亡くなった人の配偶者)が支払った相続税のうち、一定額が控除できる「相次相続控除」という制度があります。

控除額は、二次相続の際の被相続人(同)が一次相続の際に納税していた相続税額が基準になります。具体的には1年につき10%を減額した金額が、二次相続で相次相続控除として相続税額から差し引かれ、一次相続から二次相続までの期間が短いほど控除額が大きくなります。

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