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2024.06.03
不動産×相続の知って得するニュース⑧~相続税の払い過ぎと還付金請求~

こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続に関する知って得するニュース。今回は、相続税の払い過ぎと還付金請求についてまとめてみます。


令和3年は400億円以上の還付

相続が発生すると原則として10カ月以内に相続税の申告・納税の手続きをすることが必要です。時間的な余裕がなく、慌てて手続きを行ったため相続税を納め過ぎていることがあります。

そうした場合、申告期限から5年以内であれば、払い過ぎていた税額の払い戻しを受けることができます。これを「税金(相続税)の還付」と呼びます。特に遺産に不動産が含まれると、場合によって数百万円から1000万円以上が還付されることもあります。

ちなみに、国税庁の直近の資料によると、令和3年における相続税の還付(更生等による減差額)は、「本年分(令和3年中に相続が開始)」で約50億円(相続人数2378名)、「過年分(令和2年以前に相続が開始)」で約356億円(相続人数1万1082名)にもなります。

このすべてが不動産を巡っての還付だというわけではありませんが、かなりの割合を占めることは確かでしょう。

土地は評価が難しく特例の適用も複雑

なぜこうしたことが起こるのでしょうか。

ひとつには、冒頭で触れたように相続税の納税・申告は相続が発生してからわずか10カ月以内とされています。その間に、誰が相続人か確定し、遺産の内容を調べ、遺言がなければ相続人の間で遺産分割協議を行わなければなりません。時間が足りなくなることは容易に想像できます。

また、相続税の計算上、土地の評価は非常に複雑です。土地の評価額は主に相続税路線価をベースに計算しますが、土地の形状や利用形態、周囲の状況などによる様々な調整措置や特例措置があります。それぞれの土地について、どの調整措置、特例措置をどのように適用すればよいのか、税理士であっても見逃していたり、誤っていたりすることがあるといわれます。

さらに、相続税は納税者が自分で税額を計算して申告・納税するのが基本です。税務署は調査によってその額が本来より少ない場合は追徴課税を行いますが、本来より多くても何も言ってきません。

こうした様々な理由によって、相続税においては払い過ぎが発生しやすくなっているといえます。

土地の評価間違えが起こりやすいパターン

ところで、相続税の計算において、土地の評価で間違えが起こりやすいパターンとされるものがあります。

第一に、面積が広い土地です。具体的には面積が1000㎡以上、三大都市圏では500㎡以上の広さがある土地は相続税の計算上、「地積規模の大きな宅地の評価」という方法で評価することになっており、一定の条件を満たすと路線価ベースで計算した相続税評価額から大きく下がる場合があります。

第二に、不整形地、無道路地、傾斜地など土地そのものの条件が悪いケースです。不整形地とは形が歪で使いにくい土地です。無道路地は道路に接していない土地で、基本的に建物が建てられません。地面が斜めになっている傾斜地も使いにくい土地です。そのほか、道路より高かったり低かったり著しい高低差がある土地、地盤に甚だしい凹凸がある宅地なども当てはまります。

第三に、周辺環境からマイナスの影響を受けているケースです。例えば、騒音や臭気、日照障害などがひどい土地、道路や鉄道などによる震動の甚だしい土地、墓地の隣にある土地などは利用価値が低下しており、その分、評価額が減額されます。

第四に、測量した時期が古いケースです。明治時代に測量したときのままの土地には、登記簿の面積と実際の面積が異なる場合があり、実際の土地の面積のほうが小さい場合、土地の評価が過大になっています。

こうした土地は相続税の評価上、一定の補正(減額)を受けることができるのですが、遠方の土地などでは、実地調査している時間がないため図面上だけで判断してしまって見逃していたりすることがあります。あるいは、「地籍規模の大きな宅地」のように評価方法が非常に複雑な場合、税理士だけでは判断できず、不動産鑑定士や土地家屋調査士といった専門家の協力が必要になることも少なくありません。

もし、ご自分が相続した土地の中に上記のようなケースがあった場合、一度相続税に詳しい税理士に確認してもらうのもよいでしょう。

還付請求は申告期限から5年以内に

納め過ぎた相続税の還付請求が可能なのは、申告期限から5年以内です。相続税の申告期限は相続の開始を知った日(通常は相続発生日)の翌日から10か月以内なので、合わせて相続発生から5年10か月以内に納税した税務署に対して「更正の請求」という手続きを取ります。

具体的には、相続税の申告書を作成し直し、その他の必要書類とともに提出します。更正の請求後、税務署の審査により請求が認められれば「相続税の更正通知書」が届き、指定した口座に還付金が振り込まれます。審査期間の目安は、税務署によっても異なりますが、2~6か月程度といわれます。

更正の請求が認められなかった場合には「更正すべき理由がない旨の通知書」が届きます。この場合は、税務署が下した処分内容の変更を求めて不服を申し立てることができます。

なお、「還付金」は納め過ぎていた税金を返してもらっただけなので、所得税の課税対象にはなりません。ただし、還付金に対する利息である「還付加算金」については雑所得となり、原則として所得税の課税対象です。

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