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2024.05.01
不動産×相続の基礎知識⑧~相続税評価額が大きく下がる「小規模宅地等の特例」~

こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続の基礎知識を分かりやすく解説するこのシリーズ。
今回は相続税において土地の相続税評価額が大きく下がる「小規模宅地等の特例」についてです。


前々回、相続税の計算における4つのステップについて取り上げました。そのうち第1のステップは「正味の遺産額」を把握することです。

「正味の遺産額」は遺産の時価が基本になります。しかし、現金や上場株などと比べ、不動産は個別性が高いことや市場での取引情報がオープンになっていないことなどから時価が分かりにくく、税法や国税庁の通達によって一定の評価法が定められています。

土地の評価は大きく「路線価方式」と「倍率方式」に分かれるほか、様々な調整措置が設けられています。そのうち特に重要なのが「小規模宅地等の特例」です。

なぜなら、「小規模宅地等の特例」の適用を受けると、対象となる土地の相続税評価が80%または50%も減額されます。それだけ相続税の負担が下がるのです。

最も利用される「特定居住用宅地等」

「小規模宅地等の特例」には、相続される土地の用途によって次のように大きく3つのパターンがあります。

  1. 「特定居住用宅地等」…亡くなった人(被相続人)等が住んでいた土地で、330㎡まで相続税評価額が80%減額。
  2. 「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用地等」…亡くなった人(被相続人)等が事業に使っていた土地で、400㎡まで相続税評価額が80%減額。
  3. 「貸付事業用宅地等」…亡くなった人(被相続人)等がアパートや賃貸マンション、貸し駐車場などとして使っていた土地で、200㎡まで相続税評価額が50%減額。

これらのうち、最もよく使われるのが①の「特定居住用宅地等」です。実際に相続される財産では土地が多く、さらのそのうちメインになるのは亡くなった人(被相続人)が住んでいた自宅です。

適用には様々な条件が

特例の対象となる「特定居住用宅地等」に当たるかどうかについては、様々な要件が設けられており、非常に複雑です。ここでは重要なポイントを3つあげておきます。

第一に、亡くなった人(被相続人)等が住んでいた土地かどうかという点です。

「自宅なんだから当たり前だろう」と思うかもしれませんが、被相続人が亡くなる前に老人ホームに入居していて、その老人ホームで亡くなった場合はどうでしょう。

実は以前、こうした場合は対象外とされていました。税法上では「居住用に供されていた宅地等」かどうかで判断され、住民票では自宅が住所になっていたとしても、実際に生活の実態がないと対象外になるのです。

ただ、人口の高齢化が進むにつれて老人ホームで亡くなる人が増えており、2014年1月1日以降は次の2つを満たせば対象となることになりました。

  • 要介護認定又は要支援認定等を被相続人が受けていたこと
  • 被相続人が都道府県に届出がされている老人ホーム等に入居したこと

第二に、被相続人等が住んでいた土地を誰が相続するかという点です。

被相続人の配偶者が相続すれば、ほぼ自動的に対象となります。ただし、内縁関係(事実婚)では対象になりません。

また、被相続人と同居していた親族(子など)が相続する場合は対象となります。ただし、相続後、相続税の申告期限までその宅地等に居住し、かつその宅地等を所有している必要があります。 

問題は、被相続人と同居していなかった親族(子など)です。この場合、いくつものハードルがあり、具体的には次の要件を満たさなければなりません。

  • 亡くなった人に配偶者や同居の親族がいないこと
  • 相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」「3親等以内の親族」「特別の関係がある法人」の持ち家に住んだことがないこと
  • 相続した宅地を相続税の申告期限まで保有すること
  • 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないこと

これが「家なき子」と呼ばれるパターンです。親と同居していなかったけれど、賃貸住宅に住んでいたという場合です。

2017年(平成29年)まではもう少し条件が緩く、次のようになっていました。

  • 亡くなった人に配偶者や同居の親族がいない
  • 宅地を相続した親族は、相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」の持ち家に住んだことがない
  • 相続した宅地を相続税の申告期限まで保有する

この条件をクリアするため、いろいろ抜け道を探して相続税対策を行う事例があったことから、現在のように条件が厳しくなったのです。

とはいえ、繰り返しになりますが「特定居住用宅地等」として「小規模宅地等の特例」が適用されれば、実家の土地を相続する際の相続税評価額が80%減額されるのですから、適用されるのであればきちんと利用すべきです。

第三に、被相続人等が住んでいた土地を相続した後の状況です。

配偶者以外の場合、相続税の申告期限(相続発生を知ったときから10カ月)までは、基本的に相続した土地を所有し続け、かつ住み続けなければなりません。それ以前に住まなくなったり、売却したりしてはいけないということです。

以上のほかにも様々な条件があり、普通の人には判断が難しいところもあるでしょう。相続に詳しい専門家に相談することをお勧めします。

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