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2024.04.15
不動産×相続の基礎知識⑦~相続税における不動産の評価~

こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続の基礎知識を分かりやすく解説するこのシリーズ。今回は相続税における土地と建物の評価についてです。


前回、相続税の計算における4つのステップについて取り上げました。そのうち第1のステップは「正味の遺産額」を把握することです。

「正味の遺産額」は遺産の時価が基本になりますが、現金や上場株などと比べ、不動産は個別性が高いことや市場での取引情報がオープンになっていないことなどから時価が分かりにくく、税法や国税庁の通達によって一定の評価方法が定められています。

建物の相続税評価額

そもそも、日本では土地と建物は別の不動産として扱われており、登記簿も土地と建物は別になっています。続税の評価においても「土地」と「建物」に分けて評価されます。

「土地」と「建物」を比べると、建物の評価額のほうが比較的簡単に確認できるので、建物から説明します。

建物の相続税の評価額は、それぞれの建物に対して毎年、市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されている「固定資産税評価額」を確認すればOKです。固定資産税評価額がそのまま相続税においても建物の評価額になるからです。 ただし、人に貸している建物(貸家)については注意が必要です。貸家の場合、借地借家法の適用によって契約期間が満了しても明渡し請求に正当事由が必要になるなど利用が制限され、一定の減額が行われるのです。

減額される割合は、【借家権割合×賃貸割合】で求めます。

このうち、借家権割合は現在、全国どの地域でも30%となっています。

もうひとつの賃貸割合は、アパートや賃貸マンションなど複数の住戸がある建物において、実際に賃借人が入居している住戸の割合のことです。つまり、人が住んでいない住戸については評価減の対象にはなりません。

ただし、ずっと貸していたのにたまたま相続が発生したときに空室になっていたといったようなケースは評価減の対象になります。

土地の相続税評価額

建物よりはるかに複雑なのが土地の相続税評価額の算出です。

まず、土地の評価には、「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあり、どちらを使うかはエリアによります。

「路線価方式」は主に、都市部や地方でも中心市街地などで用いられるものです。毎年、税務署が各エリアの道路ごとに宅地1㎡当たりの評価額(これを「路線価」といいます)を設定しており、その道路に面した宅地の相続税評価額は基本的に、路線価に土地面積を掛けることで計算します。

もうひとつの「倍率方式」は、路線価のないエリアで用いられるものです。こちらは、それぞれの土地に各自治体(市町村)が設定している固定資産税評価額に一定の倍率を掛け、相続税の評価額とします。

「路線価方式」「倍率方式」いずれも、国税庁のホームページから確認できます。

路線価方式または倍率方式によってその土地のベースとなる評価額が分かったら、次は土地の形状や利用状況による調整を行います。

例えば、間口はあるものの奥行きのない土地や逆に間口が狭くて奥行きが長い土地に対しては、最高20%減額される「奥行価格補正率」が適用されます。

あるいは、土地の形が歪な場合は全体に占める不整形な部分の割合によって最大40%減額される「不整形地補正率」もあります。

他にも、次のような土地にはそれぞれ一定の減額が認められます。

・地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地)

・利用価値が著しく低下している宅地

例:付近の宅地に比べて道路との高低差が著しい土地

地盤に甚だしい凹凸のある土地

    振動の甚だしい土地

    騒音、日照障害、臭気、忌み等により取引金額に影響を受けると認められる土地

さらに、相続した土地が亡くなった人のマイホームの敷地であったり、事業所の敷地であったりした場合、一定の範囲で相続税評価額を減額する特例があります。

それが「小規模宅地の特例」と呼ばれるもので、宅地の使われ方によって主に居住用、事業用、不動産貸付用の3パターンがあります。

例えば、居住用(亡くなった人のマイホームに使われていた土地)で一定の条件を満たすものは「特定居住用宅地等」とされ、330㎡までの部分の相続税評価額が8割減額されます。

あるいは、事業用(亡くなった人の事業に使われていた土地)で一定の条件を満たすものは「特定事業用宅地等」とされ、400㎡までの部分の相続税評価額が8割減額されます。8割の減額ですから、相続税の軽減効果は非常に大きいです。

このように土地の相続税評価額を算出するには、その土地が存在するエリアが路線価方式なのか倍率方式なのかの確認から始まり、補正率等による修正を加えたり、さらに「小規模宅地等の特例」の適用などを行ったりする必要があります。

これらを一般の方が自分で行うのは難しく、基本的には税理士、それも相続税に精通した税理士に相談することを私たちはお勧めしています。

ある程度、費用はかかりますが、それによって相続税額が大きく違ってくることも珍しくありません。

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