column コラム
2023.12.25
不動産×相続の知って得するニュース⑤~2022年の相続税の申告と調査の状況~
2022年の相続税の申告と調査の状況
こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続に関する知って得するニュース。今回は、国税庁が2023年12月に発表した2022年(令和4年)における相続税の申告と調査等の実態について取り上げてみます。
国税庁では毎年、「相続税の申告事績の概要」として、相続税の申告書につながった被相続人(亡くなった人)の人数やその死亡者数全体に対する割合をはじめ、相続税額や被相続人1人当たりの課税価格、税額などを発表しています。
今回の発表資料によると、2022年における相続税の課税価格は20兆6840億円、税額は2兆7989億円でした。税収はおよそ65.2兆円で、税目としては5番目の金額です。
また、被相続人数(死亡者数)は156万9050人(前年対比109.0%)だったのに対し、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は15万858人(同112.4%)で、課税割合(亡くなった人のうち相続税の申告につながった割合)は9.6%でした。
これは2021年の9.3%から0.3ポイントの上昇ですが、相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられた2015年の課税割合8.0%と比べると1.3ポイントの上昇であり、年々少しずつ上昇する傾向が続いています。
ちなみに、被相続人一人当たりの課税価格は1億3711万円、相続税額は1855万円で、いずれもほぼ前年並みでした。
相続税の申告事績
令和3年分 | 令和4年分 | 対前年比 | ||
① | 被相続人数(死亡者数) | 143万9856人 | 156万9050人 | 109.0% |
② | 相続税の申告書の提出に係る被相続人数 | 13万4275人 | 15万858人 | 112.4% |
③ | 課税割合(②/①) | 9.3% | 9.6% | 0.3ポイント |
④ | 相続税の納税者である相続人数 | 294,058人 | 329,444人 | 112.0% |
⑤ | 課税価格 | 18兆5,774億円 | 20兆6840億円 | 111.3% |
⑥ | 税額 | 2兆4421億円 | 2兆7989億円 | 114.6% |
⑦ | 被相続人1人当たり課税価格(⑤/②) | 1億3835万円 | 1億3711万円 | 99.1% |
⑧ | 被相続人1人当たり税額(⑥/②) | 1819万円 | 1855万円 | 102.0% |
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
なお、注目されるのは相続財産の金額の構成比です。申告書のデータによれば、2022年において、相続財産で最も多くを占めるのは「現金・預貯金等」で34.9%、次が「土地」で32.3%あり、この2つでほぼ3分の2を占めます。ただ、以前は「土地」が圧倒的に多く、例えば2013年には「土地」が41.5%、「現金・預貯金等」は26.0%に過ぎませんでした。相続財産の中身については年々、「土地」から「現金・預貯金等」にシフトしているといえます。
同じく「相続税の調査等の状況」では、2022事務年度における相続税の実地調査の状況および相続税の簡易な接触の状況について発表されています。
相続税の「実地調査」は、資料情報などから申告額が仮称であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について、税務署員が出向いて調査を行うものです。
2022事務年度においては、前年度から約3割多い8196件の実地調査が行われ、追徴税額は669億円に上りました。
相続税の実地調査事績
令和3年事務年度 | 令和4年事務年度 | 対前事務年度比 | ||
① | 実地調査件数 | 6317件 | 8196件 | 129.7% |
② | 申告漏れ等の非違件数 | 5532件 | 7036件 | 127.2% |
③ | 非違割合(②/①) | 87.6% | 85.8% | ▲1.7ポイント |
④ | 重加算税賦課件数 | 858件 | 1043件 | 121.6% |
⑤ | 重加算税賦課割合(④/②) | 15.5% | 14.8% | ▲0.7ポイント |
⑥ | 申告漏れ課税価格 | 2230億円 | 2630億円 | 117.9% |
⑦ | ⑥のうち重加算税賦課対象 | 340億円 | 388億円 | 114.2% |
⑧ | 追徴課税(本税) | 486億円 | 582億円 | 119.7% |
⑨ | 追徴課税(加算税) | 74億円 | 87億円 | 118.1% |
⑩ | 追徴課税(合計) | 560億円 | 669億円 | 119.5% |
⑪ | 実地調査1件当たり申告漏れ課税価格(⑥/①) | 3530万円 | 3209万円 | 90.9% |
⑫ | 実地件数1件当たり追徴税額(⑩/①) | 886万円 | 816万円 | 92.1% |
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
また、国税庁では実地調査の一方、文書や電話による連絡または来署依頼による面接によって、申告漏れ、計算誤り等を是正する「簡易な接触」という手法も用いています。2022事務年度には1万5004件の接触を行い、追徴税額は87億円でした。
相続税の簡易な接触の事績
令和3年事務年度 | 令和4年事務年度 | 対前事務年度比 | ||
① | 簡易な接触件数 | 1万4730件 | 1万5004件 | 101.9% |
② | 申告漏れ等の非違件数 | 3638件 | 3685件 | 101.3% |
③ | 申告漏れ課税価格 | 630億円 | 686億円 | 108.9% |
④ | 追徴課税(本税) | 65億円 | 82億円 | 126.2% |
⑤ | 追徴課税(加算税) | 4億円 | 4億円 | 108.3% |
⑥ | 追徴課税(合計) | 69億円 | 87億円 | 125.2% |
⑦ | 簡易な接触1件当たり申告漏れ課税価格(③/①) | 428万円 | 457万円 | 107.0% |
⑧ | 簡易な接触1件当たり追徴税額(⑥/①) | 47万円 | 58万円 | 122.9% |
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
そのほか、無申告事案の実地調査、海外資産関連事案に関する実地調査、贈与税に対する実地調査を合わせると相続税全体の調査件数は2万3200件、追徴税額は756億円に上り、いずれも新型コロナウイルス禍の前(2018年度)を上回ったといいます。
納税は国民の義務であり、相続税についても適切な申告納税を行うことが大事です。