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2023.12.11
不動産×相続の知って得するニュース④~タワーマンションへの課税強化~

タワーマンションへの課税強化

こんにちは。
SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続に関する知って得するニュース。
今回は「タワマン節税への課税強化」についてです。


10年ほど前からタワーマンションは、相続税対策において有力な手法として人気を集めてきました。その基本的な仕組みは次のようなものです。

相続が発生すると、被相続人(亡くなった人)の資産は相続人に引き継がれます。その際、資産が一定の額を超えると相続税がかかります。

相続税がかかるかどうか、また税額がいくらになるかは、相続された資産の相続税評価額をもとに計算します。

この点、金融資産の多くは評価額がすぐ分かります。預貯金なら額面額そのままですし、株式(上場株式)や債券は市場での取引価格が日々公表されています。

これに対して不動産はそう簡単ではありません。不動産はひとつとして同じものはありませんし、個々の物件の取引も数年どころか十数年、下手をすると数十年に1回あるかないかです。また、取引価格は多くの場合非公開です。

そこで相続税の計算にあたって、不動産の評価については独特のルールが定められています。

まず、都市部の土地については毎年、各地の税務署が公表する相続税路線価(道路ごとにその道路に面する土地の1㎡当たりの価額を決めたもの)を基にし、建物については自治体が定める固定資産税評価額を基にします。土地の相続税路線価は一般に市場価格の6~8割程度といわれ、建物の固定資産税評価額はそれよりさらに低い5~7割程度とされます(実際の乖離幅はさらに大きいケースもあります)。

マンションの場合、1棟全体の土地と建物の評価額を計算し、それを各住戸の専有面積の割合に応じて按分します。その際、階数や向きは考慮されません。特にタワーマンションでは、低層階と上層階では市場価格(取引価格)に大きな差がありますが、相続税評価額においては専有面積が同じであればほとんど差がないのです。

これが何を意味しているのかというと、タワーマンションの上層階の住戸を購入すると、その市場価格に対して相続税評価額が大幅に低くなる傾向があります。

国税庁の調査では、例えば東京都にある築9年43階建てマンションの23階(67.17平方メートル)の部屋の市場価格は1億1900万円なのに対し、相続税評価額は3720万円でした。市場価格と相続税評価額の乖離率は3.20倍に達します。

こうした仕組みを利用したのが「タワマン節税」です。タワマン節税に対してはまず、行き過ぎだと思われる個別ケースへの課税強化が行われました。

有名なのが2022年4月に出されたタワマン節税に関する最高裁判決です。市場価格が13億9000万円のタワマンについて、相続人は国税庁の財産評価ルールに従って相続税評価額を3億3000万円とし、ローン(負債)等を差し引き相続税0円で申告しました。ところが国税庁はこれ認めず、不動産鑑定士によって相続税評価額を12億7000万円とし、追徴課税を合わせて約3億3000万円の支払いを求めたのです。

国税庁が援用したのが、「総則6項」と呼ばれる別のルールです。これは財産評価基本通達第1章総則6項の略称で、本来の財産評価のルールによって評価することが“著しく不適当”と認められる財産の評価は国税庁長官の指示を受けて評価する、というものです。

このケースでは、被相続人(亡くなった人)が91歳の時に10億円以上のローンを借りてタワマンを購入していたこと、融資した銀行内の稟議書に「相続税対策として不動産を購入」との記載があった点などが判断材料になったといわれます。

さらに政府はここにきて、タワマンの財産評価のルールそのものに問題があるとして制度面から見直す方向に舵を切りました。

国税庁では2023年1月、マンションの相続税評価の算定ルールを議論する有識者会議を設立し、6月末には市場価格に基づいてマンションの相続税評価額を引き上げる新たな算定ルールを決定したのです。

具体的には、相続するマンションの築年数、総階数、所在階、敷地持ち分の4項目について指数化し、通常の計算方法による相続税評価額と市場価格との乖離率を1.67倍になるよう相続税評価額のほうを補正します。これは国税庁の調査で、評価額が実勢価格の平均6割となった戸建てとそろえる狙いがあるとされます。結果としてマンションで実勢価格の平均4割程度にとどまっている評価額は6割以上に引き上げられます。

国税庁は財産の評価方法を定めた通達を2023年10月に改正、新たな算定ルールは24年1月から適用される見込みです。

なお、タワマンについては固定資産税についてもすでに、2018年度から計算方法が見直されています。

従来は建物全体の固定資産税の総額を計算し、それを階数などに関係なく各住戸の専有面積によって按分していました。しかし、高層階ほど市場価格は高く、低層階に比べて固定資産税の負担は割安になりがちです。

そこで各住戸の固定資産税を決める際、中間階を0として1階上にいくと0.2564%をプラス、1階下にいくと0.2564%をマイナスすることになったのです。

タワーマンションに限らず、行き過ぎた節税対策についてはやがて規制の網がかけられることはこれまでも度々起こっています。

目先のメリットだけにこだわった安易な節税対策は避けた方が無難です。

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