column コラム
2024.01.15
不動産×相続の基礎知識④~遺言はなぜ必要なのか?~
遺言はなぜ必要なのか?
こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続の基礎知識を分かりやすく解説するこのシリーズ。今回は遺言について取り上げてみます。
「遺言」という言葉を聞いた人は多いと思います。普通は「ゆいごん」と読みますが、法律用語としては「いごん」と読みます。
遺言とは自分の死後、自分の財産をどのように処分するのかについて生前に行う意思表示です(なお、遺言には非嫡出子を認知するなどの身分上の事項に関する遺言もあります)。
欧米では遺言は広く普及されており、日本でも近年、次第に利用されるようになってきました。
そもそも相続については、民法において相続人とそれぞれの相続分が定められています。通常はこれに従って遺産を分けることになり、これを「法定相続分」といいます。
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
- 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
- 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
- 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
- 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
しかし、条文を見れば分るように、民法が定めているのは抽象的な相続分の割合だけです。そのため、具体的にどの遺産を誰がどのように引き継ぐのかについては、相続人全員で遺産分割の協議をする必要があります。
ところが、相続人がおかれた状況はそれぞれ異なり、考えや思惑がすれ違うこともあります。
協議がまとまらない場合には最終的に家庭裁判所に申し立て、調停または審判で解決することになりますが、家庭裁判所に申し立てるところまでいくと争いが深刻化していて、もはや相続人どうしの関係は崩壊していることも珍しくありません。
あるいは、相続人の中には被相続人(亡くなった人)の生前、その事業を手伝ったり、看護や療養に尽くしたりした人がいることもあるでしょうが、法定相続ではそうした個別の事情は関係ありません。民法ではそうした貢献について「寄与分」の定めがありますが、寄与分が認められるのは相続人に限られますし、家庭裁判所の裁判においても「寄与分」についての考慮は一般に考えられるほど高額になることはないといわれてます。
一方、法律上有効な遺言があれば、相続人はその内容に拘束されます(相続人同士で遺言とは異なる合意をすれば別)。
例えば、「妻には自宅と現金500万円、長男には賃貸マンションと株式、二男には駐車場の土地と貴金属類」というように具体的に遺産の分け方を指定しておけば、相続人もそれに基づいて相続の手続をスムーズに行うことができます(ただし「遺留分」には注意が必要です)。
遺言者が家族の状況などを踏まえた分け方を遺言できちんと決めておくことは、後に残される者にとってはトラブルを未然に防ぎ、相続人どうしの良好な関係を続けていく上でとても重要です。
また、遺言というと死期が近づいてからするものと思っている人もいるでしょうが、人はいつ何時、何が起こるか分かりません。また、遺言は本人に判断能力があるうちでなければ作成できません。
いつ何があっても残される家族が困らないように配慮し、遺言を作成しておくほうが安心です。民法では満15際以上であればいつでも遺言を作成できますし、遺言は何度でも書き直すことができ、複数ある場合には最新の日付のものが有効とされます。毎年、正月や誕生日になったら、あるいは海外旅行に行く前に遺言書を作成するようにするのもいいかもしれません。
これからの時代、私たちはもっと遺言を身近なものとしてとらえ、上手に活用していくべきだと思います。