column コラム
2024.10.30
「不動産は生前贈与がお得」は本当か? メリットとデメリットを比較
こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産に限らず、相続について調べていれば、少なからず「生前贈与」という言葉を目にするかと思います。
インターネットの記事や書籍のなかには、節税効果が高いからと生前贈与を積極的におすすめするものもあるかもしれません。
確かに生前贈与にはさまざまなメリットがあります。しかし一方で、同じくらいさまざまなデメリットも存在します。
今回のコラムでは、こうした不動産における生前贈与のメリットとデメリットを比較。
このコラムを読んでいただくことで、生前贈与や関連する制度について、より客観的に理解を深めていただければと思います。
生前贈与とは?
生前贈与とは、亡くなる前に、本人の意思で財産を家族や親族に承継することです。
相続との大きな違いは、贈与者(贈与する側)が受贈者(贈与を受ける側)に対して、存命中に財産を譲渡するという点です。
生前贈与には、暦年贈与と相続時精算課税の2種類があります。
暦年贈与
暦年贈与は、1年間(暦年)に110万円までの贈与であれば、贈与税がかからないという制度を利用した贈与方法です。
110万円までであれば、何人に贈与しても非課税ですが、110万円を超える部分については、課税価格などに基づいて10〜55%の贈与税がかかります。
相続時精算課税
相続時精算課税は贈与者が亡くなり、相続税を計算する際に、生前贈与した金額を相続財産に加算するという制度を利用した贈与方法です。
特別控除額が2,500万円と大きい点と、2,500万円を上回る部分に対しては一律20%の贈与税がかかるという点が特徴です。
不動産を生前贈与する3つのメリット
不動産の生前贈与にはさまざまなメリットがありますが、ここでは主に以下の3つについて紹介します。
贈与者の意思を反映させやすい
相続とは異なり、生前贈与は贈与者が存命中に行うことができるため、「誰に」「いつ」承継を行うかを任意で決めることが可能です。
贈与先に関しては親族以外でも指定できるので、遺留分の問題や相続争いなどが生じやすい遺言による相続よりも確実です。
また、
- 子どもが結婚(出産)して、新居が必要になった。
- 親族が体を悪くして、気兼ねなく生活できる住まいが必要になった。 など
「今のうちに承継しておきたい」というケースも少なくありません。そのような場合にも生前贈与であれば、状況に応じて譲り渡すことができます。
「価値が上がる不動産」を贈与した場合、節税効果が大きくなる
暦年贈与による生前贈与にしろ、相続時精算課税による生前贈与にしろ、いずれの場合も贈与税は「贈与した時点の不動産の価値」に課せられます。
そのため、将来的に価値が上がる不動産を贈与すると、価値が高くなってから承継する相続に比べ、税負担が軽くなるのです。
ただし、逆に言えば将来的に価値が低下する不動産を贈与した場合、税負担の面では損をするということでもあります。
したがって生前贈与をするべきか否かを判断する際は、こうした視点からも検討する必要があります。
収益不動産を贈与すると、節税効果が大きくなる
賃貸物件などの収益不動産を所有していれば、毎年収益が発生し、同時に財産も増えていきます。相続の場合、こうして増えた財産も課税対象になります。
しかし生前贈与をすれば、その時点で贈与者から受贈者に所有権が移るので、以降の不動産収益は受贈者のものとなり、課税対象からは除外されます。
そのため、収益不動産を贈与すると、節税効果が大きくなるのです。
不動産を生前贈与する3つのデメリット
不動産を生前贈与する際には、デメリットについても理解しておく必要があります。ここでは主に以下の3つについて紹介します。
税金が高くなる傾向がある
単純に贈与税と相続税を比較すると、一般的には贈与税の方が高くなる傾向があります。なぜなら、基礎控除と税率が異なるからです。
贈与税の基礎控除は、暦年贈与の場合で110万円、相続時精算課税の場合で2,500万円ですが、相続税の基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。
また、例えば税率が20%になる課税価格(基礎控除後)で比較すると、贈与税では暦年贈与の場合で400万円もしくは600万円以下、相続税では5,000万円以下となっています(相続時精算課税は一律で20%)。
不動産取得税・登録免許税が高い
生前贈与、相続いずれの場合も、不動産の所有権に変更が生じた場合は、所定の手続きに伴って不動産取得税・登録免許税の納付が必要になります。
これらは不動産の価値を基準に算出される課税標準額に、定められた税率を掛けて計算されますが、ここでも生前贈与の方が相続よりも税率が高くなっています。
不動産取得税
生前贈与 | 相続 | |
土地 | 3%(※) | 非課税 |
建物 | 住宅用:3%(※) 非住宅用:4% | 非課税 |
登録免許税
生前贈与 | 相続 | |
土地 | 2% | 0.4% |
建物 | 2% | 0.4% |
変更が利かない
仮に生前贈与後に親子の関係が悪化したり、別の親族に贈与したくなったりした場合でも、一度不動産の生前贈与の手続きを済ませてしまうと、その後は贈与者の意思で財産を取り戻すことはできません。
すでに不動産の所有権は受贈者に移ってしまっているからです。
そのため、生前贈与をする際は、本当に今の段階で承継をしてしまっても問題がないか、慎重に検討する必要があります。
まとめ
生前贈与によるメリットが大きくなるか、もしくはデメリットが大きくなるかは、贈与者様や受贈者様によって変わります。
専門知識のない方が、情報収集や試算を行ったうえで、「生前贈与をするべきか否か」の判断を下し、手続きを行うまでをご自身でやり通すのは、簡単ではありません。
SAKURA財産形成承継は、お客様一人ひとりに最適な解決策をご提案する、不動産売買・管理および資産形成と次世代への承継・相続のプロフェッショナルです。
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