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2023.11.15
不動産×相続の知って得するニュース③~「空き家」に対する課税強化~

「空き家」に対する課税強化

こんにちは。
SAKURA財産形成承継の大原です。
不動産と相続に関する知って得するニュース。今回は「空き家に対する課税強化」についてです。


いま、社会的に大きな問題になっているのが「空き家」の増加です。

5年に1回のペースで行われる「住宅・土地統計調査」の最新版(2018年)によると、2018年10月1日時点で全国には6240万7000戸の住宅があり、そのうち「空き家」は848万9000戸、総住宅数に締める割合(空き家率)は13.6%に達し過去最高を更新しました。

日本の人口はすでに2008年頃をピークに減少しており、世帯数についても2023年以降増加から減少に転じる見込みです。今後、空き家数、空き家率ともにもっと上昇していくことは間違いありません。

空き家にもいくつか種類があり、別荘や売却用の住宅、賃貸用の住宅などがあります。そして、空き家のなかでも特に増加が目立つのが「その他の住宅」(349万戸)です。

「その他の住宅」とは、主には家族で住んでいたのに誰も住まなくなった家、具体的には地方にある「親の実家」を相続したもののそのまま放っているケースなどの空き家の区分の判断が困難なものをいいます。

政府の推計によると、「その他の住宅(その他の空き家)」は、2025年(令和7年)には420万戸、2030年(令和12)には470万戸程度になるとしています。単純に毎年10万戸ずつ増えていくペースです。

政府や自治体も当然、危機感を強めており、2030年で「その他の住宅(その他の空き家)」を400万戸程度におさえることを目指そうとしています。そのため数年前から様々な手を打ってきています。

代表例が2015年に施行された「空家対策特別措置法」です。

個人が所有する住宅は住むのも住まないのも自由です。しかし、空き家のまま放置すると建物や塀などが傷み、庭には木や草が生い繁り、周囲に迷惑を及ぼします。また、不審者の立ち入りによる犯罪の温床にもなりかねません。

そこでこの法律では次のような状態にある空き家を「特定空家」として市区町村が指定できることにしました。

① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

そして、地元の市区町村では「特定空家」に対して、助言・指導・勧告・命令などの措置が取れるとしています。

このうち「勧告」までいくと、固定資産税・都市計画税において認められている「住宅用地の課税標準の特例」(※後述)の適用が除外され、固定資産税等の額が最大6倍増えることになります。

また、「命令」になると50万円以下の過料が課されることになります。

さらに「命令」の後、市区町村は「行政代執行」によって所有者に代わって空き家を解体・除去することまでできます。この場合、自治体が解体・除去するためにかけた費用は空き家の所有者が負担しなければなりません。

2015年5月から2022年3月までの累計(全国)で、「特定空家」に対する「勧告」は2382件、「命令」は294件、「行政代執行」も140件あります。

さらに2023年6月からは、「空家対策特別措置法」の改正によって「特定空家」と認めるまでには至らなくても、そのまま放置すれば「特定空家」になるおそれがある空き家を「管理不全空家」と定義し、「助言」または「勧告」を行うことができるようになりました。

こちらも「勧告」までいくと「特定空家」と同じく、固定資産税等における「住宅用地の課税標準の特例」(※後述)が適用除外され、固定資産税等が最大6倍になります。

なお、固定資産税等が最大6倍になるというのは具体的には次のような仕組みです。

まず、土地や建物を所有していると市区町村に毎年、固定資産税と都市計画税を納めなければなりません。税額はそれぞれの市区町村が土地、建物について定めた固定資産税評価額に一定の税率を掛けて計算し、通知してきます。

その税額の計算において、自宅やアパートなど人が住むための建物が建っている土地については、「住宅用地の課税標準の特例」という特例制度があります。税額を計算するベースになる課税標準額(本来は固定資産税評価額)を大幅に引き下げるものです。

住宅用地の区分 固定資産税 における課税標準 都市計画税における課税標準 
 小規模住宅用地 (200平方メートル以下の部分) 本来の6分の1 本来の3分の1
 一般住宅用地 (200平方メートルを超える部分) 本来の3分の1  本来の3分の2

空き家も通常はこの特例の対象となります。例えば、空き家になっている家の敷地が300㎡であれば、そのうち200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税の課税標準が3分の1に引き下げられます。また、残りの部分は固定資産税の課税標準が3分の1、都市計画税の課税標準が3分の2となります。税額もそれぞれの割合で少なくなります。

ところが、「特定空家」または「管理不全空家」として「勧告」を受けると対象外となり、税額がいっきに跳ね上がるというわけです。

相続したもののそのまま放っている「親の実家」を所有しているような人は、早め早めの対応が必要になっています。

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