column コラム
2023.09.26
不動産×相続の知って得するニュース②~相続登記の申請義務化~
相続登記の申請義務化
こんにちは。
SAKURA財産形成承継の大原です。
今回も、不動産と相続に関する知って得するニュースについてお届けします。
今回は2024年4月1日からスタートする「相続登記の申請義務化」についてです。
所有者不明土地の増加抑制が狙い
前回、取り上げた「相続土地国庫帰属制度」は、年々増え続ける所有者不明土地を防ごうとする国の方針によって創設されたものです。その「相続土地国庫帰属制度」といわばセットになっているのが「相続登記の申請義務化」です。
所有者不明土地とは、国土交通省によれば「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」をいいます。
通常、土地など不動産の所有者は法務局の不動産登記簿で確認することができますが、様々な理由で正しい情報が反映されないケースが増えています。
これまで登記は所有者の権利を守るためのもので義務ではなく、特に相続においては「手間や登記費用を考えると今でなくていいだろう」「相続人の間で話し合いがまとまらない」「遺産分割協議が面倒くさい」といった理由から先送りにされてきたのです。
また、所有者の住所が変わった際の登記も義務化されておらず、所有者へ連絡をとろうとしても居場所がわからないというケースも多発しています。
今回の「相続登記の申請義務化」はこうした状況に歯止めを掛けようとするものにほかなりません。
今後は登記をしないと過料も
「相続登記の義務化」は2024年4月1日から始まる予定です。2024年4月1日以降、不動産を取得した相続人は、原則として相続から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません(厳密には相続開始を知った日から3年以内)。正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。
注意しなければならないのは、過去の相続も対象になることです。その場合は原則として2024年4月1日から3年以内です(相続開始を知った日のほうが遅い場合はそれから3年以内)。
また、住所などを変更した場合も2026年4月28日までには登記申請が義務化される予定で、こちらは変更があった日から2年以内に登記申請しないと5万円以下の過料の対象となります。
ただし、相続登記にしろ変更登記にしろ正当な理由がある場合には過料の対象となりません。具体的には下記のようなケースです。
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
など
遺産分割協議がまとまらない場合はどうする?
ところで、相続にあたっては遺産分割協議を行うのが一般的です。これは相続人の間でどの遺産をどのような割合で分けるかを決めるものです。
不動産についても遺産分割協議がまとまらないと、実際には登記の申請が行えません。遺産分割協議書を提示しないと法務局の窓口では相続登記が受付けてもらえないからです。
もし相続人の間でもめると、遺産分割協議が何年にもわたって棚上げされるケースもあります。
そこで「相続登記の申請義務化」と同じく、2024年4月1日から「相続人申告登記」という制度が設けられることになりました。
これは、登記簿上の所有者(被相続人)について相続が開始したことと自らがその相続人であることを申し出る制度です。相続登記の申請義務の期間内(3年以内)にこの申出を行うと、申出をした相続人の氏名・住所等が登記され、申請義務を履行したものとみなされます。遺産分割協議が成立していることは不要です。
ただし、権利を公示するという不動産登記本来の効果はなく、これまでの登記とは性質が違います。持分の登記もされません。添付書面としては、申出をする相続人自身が被相続人(所有権の登記名義人)の相続人であることが分かる相続人自身の戸籍謄本を提出すればOKです。
遺贈の場合、相続人は単独で申請可能に
以上のほかにも今回の改正では、下記のような変更が行われます。
不動産の遺贈を受けた場合の登記
以前は、遺言書で不動産の遺贈を受けても、遺言執行者の協力がないと遺贈による名義変更手続きができませんでした。それが2023年4月1日からは単独で遺贈による名義変更登記を申請できるようになります。2023年4月1日より前に開始した相続で遺贈を受けた場合も同様です。
ただし、受遺者による単独申請ができるのは、受遺者が相続人に該当する場合に限ります。
法務局の関与の強化
住民基本台帳ネットワークシステムで、法務局(登記官)が登記簿上の所有者が死亡していることを把握した場合には、法務局(登記官)の判断で所有者が死亡していることを登記簿に記録することができます。ただし、死亡情報を記録するだけであり、相続人が登記申請義務を免れるわけではありません。
また、相続に限らず新たに不動産の所有権を取得した場合は、名義変更登記時に生年月日や住所、氏名等の情報の提供が義務化されることになります。個人の生年月日は登記簿には記録されませんが、法務局内部において氏名、住所、生年月日などの情報を元に住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会したり検索用のキーワードとして利用される予定です。