column コラム
2023.09.19
誰が相続人になるのか?
誰が相続人になるのか?
こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。
今回も不動産と相続の基礎知識を分かりやすく解説したコラムをお届けします。
今回は「誰が相続人になるのか?」です。
相続人は法律で決まっている
前回取り上げたように、民法では相続が起こることを「相続の開始」といいます。専門的には、亡くなった人を「被相続人」、相続する人を「相続人」といい、相続の開始日は原則として「被相続人が死亡した日」です。
※ただし、失踪宣告によって死亡とみなされる場合もあります。
相続が開始すると基本的に、被相続人の財産(遺産)はすべて相続人に引き継がれます。
つまり、「相続人」とは亡くなった人の財産を引き継ぐ人のことをいいます。「相続人であるかどうか」は法律(民法)によって決まっており、「相続人」のことを「法定相続人」と呼ぶことがあるのはそのためです。
「相続」と「遺贈」は違う
こういうと、「あれ、遺言で遺産を受け取る人も相続人というんじゃないの?」と思った方もいるかもしれません。
確かに亡くなった人(被相続人)が生前に有効な遺言書を残していた場合、その遺言によって「法定相続人」以外の人も遺産を受け取ることができます。
こういう人は「受遺者(じゅいしゃ)」と呼ばれ、遺言によって遺産を渡すことを「遺贈(いぞう)」といいます。
「相続」と「遺贈」はいずれも亡くなった人が残した財産(遺産)を受け取ることですが、その根拠は法律(民法)なのか遺言者なのかという違いがあります。そして、受け取る人の呼び方も「相続人」と「受遺者」というように違うのです。
法定相続人は遺族によって変わる
では、「法定相続人」は法律(民法)でどのように決められているのでしょうか。これがちょっとややこしく、残された遺族によって変わってくるのです。それをまとめたのが下の図です。
パッとみるとややこしそうですが、図中の数字の順に見ていくと分かりやすいと思います。
- 配偶者
亡くなった人(被相続人)に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。
配偶者以外の人については次の順番で配偶者とともに相続人になります。配偶者がいなければ各順位の相続人のみが相続人になります。 - 第1順位(子)
亡くなった人(被相続人)に子がいれば、子が第1順位の相続人になります。第1順位とは「配偶者以外で1番目」ということです。
なお、子がすでに亡くなっている場合も、その子や孫(被相続人から見れば孫やひ孫:直系卑属)がいれば相続人になります。
つまり、配偶者がいれば配偶者と子が相続人になり、配偶者がいなければ子のみが相続人になります。 - 第2順位(親)
亡くなった人(被相続人)に子がおらず、父母(直系尊属)がいれば、父母が第2順位の相続人になります。
なお、父母がいずれも亡くなっており、祖父母が存命なら祖父母が相続人になります。
つまり、配偶者がいれば配偶者と父母、または祖父母が相続人になります。 - 第3順位(兄弟姉妹)
亡くなった人(被相続人)に子も父母もいない場合、兄弟姉妹が第3順位の相続人になります。
なお、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合も、その子(孫は含まない)がいれば相続人になります。
相続人にならないケースに注意
以上が「誰が相続人になるのか?」についての基本ですが、相続人にならないケースがあるので、主なものをあげておきます。
第一に、配偶者や子が相続人となるには法律上の関係が必要です。配偶者については内縁関係では相続人になりません。また、いわゆる非嫡出子については、亡くなった人(被相続人)が認知していないと相続人にはなりません。
第二に、相続の発生後、3か月以内に相続放棄をした人は、最初から相続人でなかったものとされます。
第三に、「相続欠格事由」といって、被相続人の生命を侵害するような行為を故意に行うなど5つの事由に当てはまる相続人は相続権を失います。
第四に、亡くなった人(被相続人)が再婚している場合、配偶者の連れ子はそのままでは相続人になりません。相続人となるには養子縁組が必要です。
相続人の範囲は、法律では決まっていますが、実際には相続が発生してみないとはっきりしません。
また、いわゆる“隠し子”がいたりすることもあり、相続の手続きにおいては亡くなった人(被相続人)の戸籍をその誕生まで遡って調べます。
「誰が相続人になるのか?」は実務上も意外に難しい問題なのです。