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2026.02.28
知らないと“争族”が始まる?相続不動産の「固定資産税評価額」と「相続税評価額」の“ズレ”について

皆さん、こんにちは。SAKURA財産形成承継の大原です。

いわゆる“争族(そうぞく)”は、決して一部の特殊な家庭だけで起きるものではありません。

実際には、「仲が良かったはずの兄弟姉妹」が、相続を境に疎遠になってしまうケースは少なくないのです。

その原因はさまざまですが、意外と見落とされがちなのが、相続不動産の評価額に対する認識のズレです。

具体的には、「固定資産税評価額」と「相続税評価額」(※)。

同じ不動産を指しているにもかかわらず、この2つの数字が違うことで、「話が違う」「聞いていた金額と違う」といった不信感が生まれ、家族間の対立へと発展していきます。

この記事では、相続不動産における2つの評価額の違いと、その“ズレ”がどのように争族につながっていくのかを、専門家の視点から解説していきます。

※「市場価格」も評価額に対する認識のズレが生じますが、今回は特に言葉の似ている「固定資産税評価額」と「相続税評価額」にフォーカスします。

そもそも「固定資産税評価額」と「相続税評価額」とは

相続不動産の話になると、必ず登場するのが「評価額」という言葉です。

ただし一口に評価額といっても、不動産には複数の評価基準が存在します。その代表的なものが、「固定資産税評価額」と「相続税評価額」です。

固定資産税評価額

市区町村が算定する評価額で、毎年支払う固定資産税や、不動産登記にかかる登録免許税の計算に使われます。

原則として3年に1度見直され、課税の公平性を目的とした、比較的安定した基準で評価されているのが特徴です。

相続税評価額

国税庁が定める評価基準に基づき、相続税を計算するために使われるものです。

土地であれば「路線価」、建物であれば固定資産税評価額をもとに算出され、毎年見直されます。

2つの評価額は「ズレて当たり前」

重要なのは、この2つの評価額は、そもそも目的が違うという点です。

どちらが正しい、どちらが間違っている、という話ではありません。

それぞれが「別の税金」「別の判断」のために用意された数字であり、同じ金額になることのほうが珍しいのです。

評価額の“ズレ”が争族を生む典型的な流れ

では、この2つの評価額のズレが、どうして“争族”に発展するのでしょうか。

“争族”までのステップ①

生前・初期段階での「評価額の刷り込み」

相続が具体的に意識される前後、家族の会話の中で、不動産の価値が話題に上ることがあります。

「この家は、評価額で見ると○千万円くらいだな」

多くの場合、この数字は固定資産税の通知書に記載された固定資産税評価額ですが、この時点で

「どの評価額を指しているのか」

「何の判断に使う数字なのか」

が認識・理解されていることはほとんどありません。

しかし、この“何気ない一言”が、後の判断の「基準」として家族の中に刷り込まれてしまい、対立の火種になっていくのです。

“争族”までのステップ②

相続発生後、「不動産をどうするか」を現実的に考え始める

相続が発生し、相続税の申告期限が見えてくると、不動産をどうするかという現実的な選択を迫られます。

  • 売却するのか
  • 誰かが相続して保有するのか
  • それとも共有にするのか

こうした判断を下す際には、税金や分配額といった具体的な数字が不可欠になります。

この段階で、税理士や不動産会社から示されるのが相続税評価額や市場価格です。

すると、これまで前提となっていた数字(=「この家は、評価額で見ると○千万円くらいだな」)との間に、明確な差が生じるのです。

“争族”までのステップ③

「話が違うじゃないか!」

ここで初めて、家族の間に違和感が生まれます。

「聞いていた金額と違う」

「そんなに高い(安い)とは思っていなかった」

問題なのは、数字が合っていたのか、間違っていたのかではありません。説明を受けたつもりだった前提が崩れたことが、不信感につながるのです。

この不信感はやがて、「○○が自分に都合のいい数字を伝えていたのではないか」「きちんと説明されていなかったのではないか」という疑念に変わります。

その結果、本来防げたはずの家族間の対立が一気に深まっていく、というわけです。

なぜ「固定資産税評価額」と「相続税評価額」はズレるのか

同じ不動産の評価額であるにもかかわらず、なぜ「固定資産税評価額」と「相続税評価額」はズレるのでしょうか。これには大きく3つの理由があります。

評価の目的が違う

固定資産税評価額は、毎年継続して課税される固定資産税を、できるだけ公平かつ安定的に徴収するための基準です。

そのため、「その不動産が今いくらで売れるか」ではなく、長期間にわたって税負担に大きなブレが生じないことが重視されます。評価はあくまで課税のための“基準値”として設計されています。

一方、相続税評価額は、相続という一度きりのタイミングで課税される相続税を計算するためのもの。

したがって、相続時点での経済状況や土地の利用価値を反映し、相続人間の公平を保つことが重視されます。

その結果、評価は固定資産税評価額とは異なる考え方で計算されるのです。

計算のもとになる価格水準が違う

固定資産税評価額は、市場価格(実勢価格)よりも低めに設定されるのが一般的です。

一方、相続税評価額は、その固定資産税評価額や路線価をベースに算出されるため、結果として両者の金額には差が生じます。

更新頻度が違う

固定資産税評価額は3年間据え置かれるのに対し、相続税評価額は毎年更新されます。

そのため、地価が上昇・下落している局面では、ズレがより大きく感じられることもあります。

専門家の目で見る「固定資産税評価額」と「相続税評価額」

「基準=評価額」が2つあるという状況で、家族が対立せず、最善の選択肢を選ぶには、どうするべきなのか?

こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

私たちSAKURA財産形成承継株式会社をはじめ、不動産相続の実務に携わる専門家は、「固定資産税評価額」と「相続税評価額」をどちらか一方の正解として選ぶことはありません。

重要なのは、どの評価額が正しいかではなく、どの判断に、どの評価額を使うのかという視点です。

すなわち、

相続税評価額が基準になる時・相続税の申告
・納税額の計算
固定資産税評価額が基準になる時・登記手続き
・登録免許税、共有持分の清算

といったように使い分けます。

また、もし不動産を売却するのであれば、これらとは別に「市場価格」という別の物差しが必要になります。

専門家は、こうした複数の評価額を「混乱の元」として排除するのではなく、判断の局面ごとに使い分けるための材料として整理します。

評価額のズレに振り回されるのではなく、ズレを前提として位置づけること。そこに、不動産相続を穏当かつ適切に進めるための答えがあるのです。

まとめ

相続不動産をめぐる“争族”の多くは、特別な事情から生まれるものではありません。

今回解説した固定資産税評価額と相続税評価額のズレからくる対立は、どんな家庭にも起こり得ます。

重要なのは数字の性質を知り、それらをどの場面で、どの評価額を使うべきかを整理したうえで、家族で共有しておくこと。

それだけで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。

「うちはまだ大丈夫」と感じている段階こそ、一度立ち止まり、相続不動産の評価や選択肢を整理しておくことが大切です。

将来の判断を誤らないためにも、今のうちから専門家に相談し、相続の「現在地」を確認しておくことをおすすめします。

相続不動産の評価や進め方について不安がある場合は、SAKURA財産形成承継株式会社にて、現在の状況を整理するご相談も承っています。

評価額の捉え方から相続全体の設計まで、実務に即した視点でサポートしていますので、ぜひ一度お問い合わせページからお気軽にご相談ください。

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