column コラム
2025.11.30
入居者の高齢化にどう対応すべき?プロが教える「三位一体の対策」
皆さん、こんにちは。SAKURA財産形成承継の寉岡です。
近年、賃貸物件の入居者における高齢化が進んでいます。
国土交通省の調査によると、単身高齢者の割合は過去10年で急増しており、65歳以上の単身世帯は全国で約700万世帯に達しています。
こうした状況のなか、オーナー様からも「最近、入居者が高齢になってきた」「もしもの時はどうすればいいのか」といった不安の声が多く寄せられています。
高齢入居者の増加は、人として支えるべき社会的テーマであると同時に、賃貸経営上のリスク管理課題でもあります。
今回のコラムでは、孤独死などの実態を踏まえつつ、リスクを最小化するための三位一体の対策——「見守り」「孤独死保険」「契約条項の整備」について解説します。
増加する孤独死。オーナーが想定するべきリスクとは?
高齢入居者の増加に伴い、全国で孤独死の件数が増え続けており、東京都23区では2003年に4,849件だった孤独死が、2019年には8,433件と約1.7倍に増加しています。
では、もし入居者が物件内で孤独死した場合、オーナー様にはどのような負担が生じるのでしょうか。
例えば、家賃月6万円の都内・築30年アパートで、孤独死の発見までに10日かかったとした場合、以下のようなコストが発生する可能性があります。
| 特殊清掃・消臭費用 | 約25万円 |
| 遺品整理費用 | 約20万円 |
| 原状回復工事費用 | 約35万円 |
| 空室期間の発生による家賃損失(約6ヶ月) | 36万円(6万円×6ヶ月) |
| 合計 | 約110万円 |
※上表の金額はあくまで一例です。実際はこの限りではありません。
少額短期保険協会の全国調査でも、孤独死に伴う損害額は平均92.4万円。
さらに心理的瑕疵による家賃減額などを含めると、100万円を超えるケースが一般的です。
事故物件として再募集をかける際、家賃を1〜2割下げるケースが中心で、内見者がなかなか決まらず、3割下げてもなお募集期間が長期化する傾向があります。
結果として5〜6ヶ月、長いケースでは1年近く空室が続いたというオーナー様の声も聞かれます。
つまり孤独死は、「発生頻度は低くても、1件で年間収益が吹き飛ぶ」ほどのリスクを持っているのです。
この現実を前に、今やすべてのオーナー様に求められているのが、三位一体のリスク対策です。
三位一体のリスク対策とは?──「見守り」「孤独死保険」「契約条項の整備」
孤独死リスクへの備えは、単一の施策だけでは十分に機能しません。
重要なのは、「見守り」「孤独死保険」「契約条項の整備」を連携させることです。
| 役割 | 主な目的 | 効果 |
| 見守り | 事故の早期発見 | 損害の最小化 |
| 孤独死保険 | 発生後の費用補填 | 出費の軽減 |
| 契約条項の整備 | 法的トラブルの防止 | 貸主・借主の安心 |
この3つを一体で整えることで、「早く気づける」「損をしない」「揉めない」という“リスク耐性の高い管理体制”を築くことができるのです。
「見守り」──日常の小さな異変を早期に察知する仕組みづくり
孤独死対策の第一歩は、「早く気づける仕組み」をつくることです。
しかしオーナー様が四六時中、入居者の方々の状況を把握しておくわけにはいきません。そこで効果的な施策が「見守りサービス」です。
このサービスには、以下のようなタイプがあります。
| タイプ | 特徴 | 目安となるコスト(月額) |
| 緊急通報ボタンタイプ | 入居者自身がボタンを押すことで通報できる | 約2,000〜3,000円 |
| IoTセンサータイプ | 電気・水道等の使用量や人感センサーを使って異常を察知する | 約2,000〜3,000円 |
| 自動電話安否確認タイプ | 一定時間応答がない場合に通報が行われる | 約1,000円前後 |
| 警備会社連携タイプ | ガードマンが駆けつける | 約6,000円〜 |
※上表の金額はあくまで一例です。実際はこの限りではありません。
たとえば、あるオーナー様はIoTセンサータイプの見守りサービスを導入。それから数ヶ月後のある日、水道の使用が12時間途絶えたことをセンサーが検知しました。
管理を担当していた奥様が確認に向かった結果、転倒して動けなくなっていた入居者を救助できたケースがありました。
小さな異常の検知が、命を救うことにつながる——それが見守りサービスの大きな意義です。
なお、導入の際には、以下の3点に配慮し、余計なトラブルを招かないように注意が必要です。
- プライバシーへの配慮
- 緊急時の連絡ルート(管理会社・家族・警察)
- 契約書への明記
「孤独死保険」──“万が一”に備えるセーフティネット
孤独死が発生しないことに越したことはありません。しかし、見守りサービスなどで対策をしていても、予期せぬ事態は起こり得るものです。
そうした“万が一”に備えるセーフティネットとなるのが、家主費用補償保険(孤独死保険)です。
補償範囲は保険会社やプランによって変動しますが、一例として以下のようなものが補償の対象となります。
| 補償対象 | 具体的な内容 |
| 原状回復費 | 特殊清掃、消臭、修繕費用 |
| 残置物処理費 | 遺品整理・廃棄費用 |
| 家賃損失 | 空室期間中の賃料補填 |
| 心理的瑕疵補償 | 家賃減額・入居付け困難時の補填 |
保険料は1戸あたり月200〜400円程度が一般的。
補償上限は100〜300万円で、「月300円の保険料で300万円の補償」というコストパフォーマンスの高い商品もあります。
孤独死の損害平均額(約100万円)を考えると、全戸加入でも1棟あたり年間数万円でリスクを吸収できる計算です。
「契約条項の整備」──その時、誰が、何をする責任があったのか?
経済的な損失への対策ができていても、まだ安心はできません。なぜなら、以下のようなトラブルが発生する可能性があるからです。
- 遺族から「管理がずさんだった」「見守りを怠った」などの責任を問われたり、損害賠償を請求される。
- 相続人や後見人から「契約解除や荷物処分の手続きが不当だった」という民事紛争を起こされる。
- 行政・近隣住民から「異臭・衛生問題への対応が遅れた」という管理責任を追及される。
このような事態に陥ったとき、責任の所在を明確にできるのが「契約条項の整備」です。
具体的には、高齢入居者との契約では、事前に次のような特約・取り決めを交わしておくことで、法的なトラブルのリスクを抑えられます。
| 緊急連絡先・後見人の明記 | 契約時に、実際に対応できる親族や第三者の連絡先を確認し、同意を得ておく。 |
| 長期不在時の通知義務 | 「旅行や入院などで1週間以上留守にする場合は、事前に貸主へ連絡すること」などの条項を明記しておく。 |
| 見守りサービスの導入特約 | 「◯◯歳以上の者の入居に際しては、見守りセンサーを設置することを条件とする」などの条項を明記しておく。 |
| 死後事務・契約終了に関する条項 | 「入居者が死亡した場合、貸主は相続人または死後事務委任者と協議の上、契約を終了できるものとする」などの条項を明記しておく |
この他、原状回復や残置物の処理など、明記しておくことでリスクを回避できる条項は多岐に渡ります。
万全の対策をしたいという方は、あらかじめ専門家に相談する必要があります。
まとめ
入居者の高齢化は、いまやどの物件でも避けて通れないテーマです。
しかし、孤独死やトラブルのリスクは、適切な準備をしておくことで大きく減らすことができます。
事前にしっかりと対策を講じておくことが、オーナー様にとっても入居者にとっても、安心して住み続けられる住環境を守ることにつながります。
SAKURA財産形成承継では、物件や入居者の状況に合わせて、法務・保険・管理の各分野を横断した実践的なサポートをご提案しています。
「どこから手をつければいいかわからない」という方も、まずは一度お問い合わせフォームからご相談ください。
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